1. コンピュータプログラムの保護強化
これまで「コンピュータプログラムが記録された記録媒体」は発明の対象であったが、「コンピュータプログラム」自体は発明の対象ではなかった。したがって、CDやDVDのような記録媒体に記録されず、ネットワーク上で伝送されるコンピュータプログラムの保護が課題であった。改正特許法は、方法の発明で特許権の侵害を知りながら、その方法の使用を請約する行為を特許発明の実施に含ませることによって、プログラムをオンラインで伝送する際にも特許権侵害となるよう規定した。(特許法 2022年3月11日施行)
2. 懲罰的損害賠償制度の導入
他人の商標権又はデザイン権を故意に侵害したとき、商標権者又はデザイン権者の実際の損害額の最大3倍まで賠償するようにする懲罰的損害賠償制度を2022年10月20日から施行した。一方、他人の特許権または営業秘密を故意に侵害した場合、実際の損害額の最大3倍まで賠償するようにする懲罰的損害賠償制度は2019年7月9日からすでに施行されている。 裁判所は侵害者が故意または損害発生の恐れを認識した程度、侵害行為による被害規模、侵害行為によって侵害者が得た経済的利益、侵害行為の期間および回数、侵害行為による罰金、侵害行為をした者の財産状態、侵害行為をした者の被害救済努力の程度などを考慮して賠償額を算定する。
3. 生産能力を超えた部分に対する損害賠償の拡大
産業財産権者が権利侵害者に損害賠償を請求する際、従前は権利者の生産能力を超える部分について損害賠償を請求することができなかったが、この超過部分についても「特許発明の実施について合理的に受けることができる金額(実施料)」とみなして請求することができるようになった。(特許法 2020年12月10日施行;商標法、デザイン保護法、不正競争防止法 2021年6月23日施行)
4. デザイン保護対象の拡大
従来のデザイン保護法上の保護対象には物品性が要求されていたが、デザイン保護法改正により保護対象の範囲が拡大し「画像」(デジタル技術又は電子的方式で表現された図形·記号など機器の操作に用いられ、又は機能が発揮されるものに限る。)そのものが保護対象となった。(2021年10月21日施行)
5. 審判請求期間及び再審請求期間の延長
従前は特許、デザイン、商標登録の拒絶決定に対する審判請求期間及び再審査請求期間が特許庁通知書の受付日から30日であったが、この期間を3ヶ月に延長した。特に外国出願人の立場では通信を考慮すると便利になった。(2022年4月20日施行)
6. データの不正取得および使用禁止
商品として広く提供されるデータ、またはコンソーシアム内で共有されたデータ等を事業者が取引を通じて第三者に提供するデータを不正取得し、使用又は公開する行為を不正競争行為と規定した。(不正競争防止法 2022年4月20日施行)
7. 商標の部分登録制度の導入
従前は商標登録出願において一部指定商品のみに拒絶理由があった場合、出願人が別途の対応をしないとその出願全体が拒絶されたが、改正法では出願人の対応がなかったとしても拒絶理由のない残りの商品に対して登録を受けることができるようになった。(商標法 2023年2月4日施行)
8. 再審査制度の導入
審査官の特許、デザイン、商標登録の拒絶決定について特許請求の範囲を縮小し、又は指定商品の範囲を縮小する等簡単に拒絶理由を解消できる場合には拒絶決定不服審判を請求することなく再審査を請求することにより登録が受けるようになった。(特許法、デザイン保護法、商標法 2023年2月4日施行) |