弁理士所得の不都合な真実 (電子新聞、2023年7月27日)
金明信 大韓弁理士会、前会長
国税庁は数年前、専門資格士の中で弁理士の所得が1位であると発表した。所得とは年収から費用を控除して残った金額を称するが、国税庁は弁理士が申告した年収から費用を控除せず、年収をもって開業会員数に分けた後、これを平均所得金額であると発表したことにより年収と純所得とが混ぜた結果を招いてしまうことになった。
それでは果たして現実はどうなのか具体的に検討してみよう。2022年度専門資格士の年収を調査するために国税庁の国税統計ポータルに入って国税統計の中で付加価値税項目をみると、全体専門資格士が申告した年収が公開されている。建築士は建築法人と個人事務所の年収が11兆3,388億ウォンであり、弁護士は法務法人と個人事務所の年収が8兆1,861億ウォンであり、税理士は税務法人と個人事務所の年収が6兆6,755億ウォンであり、公認会計士は会計法人と個人事務所の年収が5兆6,447億ウォンであり、弁理士は特許法人と個人事務所の年収が1兆2,133億ウォンであり、鑑定評価士は鑑定評価法人と個人事務所の年収が1兆1,948億ウォンである。
このような専門資格士別の各収入を2022年末現在、各会員数に分けると、1人当り平均年収が出てくる。 建築士業界全体の年収を会員数13,300人に分けると1人当り平均年収は8億5,255万ウォンになり、弁護士業界全体の年収を会員数28,000人に分けると1人当り平均年収は2億9,236万ウォンになり、税理士業界全体の年収を会員数15,500人に分けると1人当り平均年収は4億3,068万ウォンになり、公認会計士業界全体の年収を会員数16,866人に分けると1人当り平均年収は3億3,468万ウォンになり、弁理士業界全体の年収を会員数3,531人(全体会員数4,235人のうち弁護士552人は弁護士事務所で申告するためこれら人数は控除)に分けると1人当り平均年収は3億4,363万ウォンになり、鑑定評価士業界全体の年収を会員数5,500人に分けると1人当り平均年収は2億1,724万ウォンになる。
2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の流行で観光、経済、貿易および新規技術分野への莫大な投資萎縮を招き、特に新しい技術を開発するR&D分野投資が低調であったが、特許出願事件はかえって増加した。
各資格士別の1人当たりの平均年収の順は建築士、税理士、弁理士、公認会計士、弁護士、鑑定評価士である。
このような統計から見ると、弁理士の年収が公認会計士および弁護士より高いと見られるが、年収から費用を差し引いた後の純所得はこの限りでない。その理由は一般的に弁理士は他の資格士とは異なり各種技術専攻弁理士と一緒に働いている事務所が多い方であり、各種技術分野の職員だけではなく、外国語(英語、日本語、中国語、ドイツ語、フランス語など)からなる技術明細書のハングルへの翻訳または外国語で外国人顧客への報告、先行技術調査、技術図面の作成および特許庁へのすべての特許業務のオンラインによる進行などの業務を担当する職員への費用支出が他の資格士よりはるかに高い。したがって、このような費用を控除した弁理士の純所得は平均的に公認会計士、弁護士より低くならざるを得ない。
一方、1998年から特許庁のすべての業務はオンラインで行っているため、特許庁に提出するすべての事件の統計は電算で処理され、この統計は国税庁にそのまま通知されているため、事件の漏れが根本的に遮断されている。しかも弁理士顧客の大部分が法人であるため税金計算書の発給が必須となっており、外国事件の場合、手数料と印紙代が韓国へ送金されれば、すべての外国為替は外国為替取引法によって必ず国内銀行で両替しなければならないため、この点においても透明であるといえる。
また、統計を見てみると、弁理士は比較的高い収入にもかかわらず付加価値税の納付実績が低調なものと見られるが、このことは「関税および貿易に関する一般協定」により外国から韓国へ特許出願をしたり、我が国から外国へ特許出願をする際に相互主義原則により互いに付加価値税の納付を免除しているためである。実際、2022年度に特許庁に特許、実用新案、デザイン、商標に関する総出願件数が556,436件であり、このうち外国人の総出願件数は90,207件として全体の約16%であった。このように弁理士は外貨を多く稼いで外貨収支にも寄与している。
弁理士資格を持って結婚を準備する予備新郎と新婦には社会的に所得が最も高い職業だと自慢でき、結婚相手を選ぶ時に役立つかもしれないが、不正確な統計は正さなければならないため弁理士収入と純所得に関する真実をここに明らかにしてみた。 |