弁護士の大韓弁理士会への加入 (1) (大韓弁理士会発行、知識財産ニュース新聞、2023年07月10日)
金明信 大韓弁理士会 顧問
弁護士が旧弁理士法により弁理士資格を取得し弁理士業務を遂行しながら大韓弁理士会に加入しなかったため、特許庁長がけん責処分したのは不当であるとソウル行政裁判所で行政訴訟を請求したが棄却された。しかし、このような処分が憲法に保障された職業選択の自由と平等権に反すると憲法訴願を請求し、現在憲法裁判所にこの事件が係属中である。
偶然の機会にこの事件を検討しながら問題点を見つけて、その内容を会員たちに知らせる一方、将来大韓弁理社会の存立と公益的地位を高めるために弁理士法改正が必要であることが分かった。
弁護士に弁理士資格を自動的に付与した時期は、弁護士数が全国800人余りで、弁理士数が30人余りであった1961年であり、当時弁護士は何の実務研修もなしに弁理士資格を自動的に取得し5万ウォンの入会費だけを払って弁理士業務を遂行したことは言うまでもなく、さらに大韓弁理士会会長選挙で投票して実際に弁護士が大韓弁理士会会長に当選したりもした。今日のように各種専門資格士制度が定着する以前は弁護士に弁理士、税理士、関税士、公認労務士および公認仲介士などの資格を自動的に許可しても何の対策もなかった。
しかし、歳月が経つにつれ各種専門資格士制度はなおさら専門的に発展してきた。2022年末現在、各種資格士の開業者数(資格取得者ははるかに多い)を見れば、税理士が14,692人、司法書士が7,152人、弁理士が4,350人、公認労務士が3,108人、公認仲介士が118,049人であるのに対し、弁護士は27,732人であった。1966年に司法試験に合格した人が10人余りであったが、2022年に弁護士試験に合格した人が1700人余り、弁理士試験合格者は210人余りであった。1990年、弁護士資格を持つと、司法書士、弁理士、税理士、公認労務士および公認仲介士の資格を自動的に取得し、各団体に加入しなくても合法的に業務を遂行させる弁護士法改正案が国会に提出されたが、各団体の抗議と国民世論のため撤回されたことがあった。
弁理士は各種専門技術分野に基づいて特許出願事件を処理しているため個人事務所もあるが、大部分の弁理士は合同事務所や特許法人を設立し顧客の要求に応じているのが現状である。弁理士はそれぞれ専攻技術分野に精通していなければならず、特許法、実用新案法、デザイン保護法、商標法だけでなく民法、民事訴訟法、著作権法、行政法、発明振興法、半導体集積回路の配置設計に関する法律、不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律、不公正貿易行為の調査及び産業被害救済に関する法律、産業技術の流出防止及び保護に関する法律、植物新品種保護法、インターネットアドレス資源に関する法律、種子産業法などを勉強しなければ業務をきちんと処理することができない。
特に産業財産権業務は国際性を強く帯びているため弁理士試験科目に英語が含まれており、数多くの国際協約、条約および協定などの内容を知ってこそ発明人の権利をきちんと保護することができる。例えば、特許協力条約、工業所有権の保護に関するパリ条約、欧州特許協約、欧州商標法協約、欧州単一効特許及び統一特許裁判所協約、植物新品種保護に関する国際協約、特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約、標章の国際登録に関するマドリード協定議定書、意匠の国際登録に関するハーグ協定及び商標法条約などである。
今や第4次産業革命で先端技術が国家安保に密接に関連している状況で、国際的に特許訴訟も頻繁に提起されている。数年前、アップルとサムスンの携帯電話に関する国際特許訴訟で天文学的な訴訟費用を投入し両社の社運をかけた訴訟において弁護士と弁理士が協力して事件を代理した事例を見ても、弁護士に弁理士資格を簡単に取得させる制度は時代の変化と国家競争力向上のためにも廃止しなければならない。なぜならば、この訴訟において特許権の権利範囲確認、公知技術と特許権利範囲との比較、標準技術と特許技術との比較、特許の無効(新規性、進歩性)の有無、被告技術と特許技術との比較、特許権の侵害(直接または間接)の有無、特許権の消尽の有無、特許権の権利濫用の有無、公正取引法の違反の有無、禁反言(Estoppel)原則の違反の有無、損害賠償額の算定、公正かつ合理的かつ非差別的な条件でライセンスを許可したか否か(FRAND)など技術的、法律的争点を争ったため、弁護士と弁理士の専門業務分野が明確に区分されなければならない。
外国の事例を見ても欧州27ヵ国、米国、英国、日本及び中国のどの国でも弁護士資格でもって弁理士資格を自動的に取得したにも拘わらず、その国の弁理士会にも加入しないまま弁理士業務を許す国はない。日本でも弁護士に弁理士資格を自動的に取得させたことがあったが、日本の弁護士たちは日本弁理士会に加入して産業財産権分野の情報を直接接しながら、将来特許訴訟事件を代理する場合に備えており、韓国のように弁護士が弁理士資格を自動的に取得したからといってすぐに特許出願業務をしたことはないという |