知的財産の合理的保護 (2022年10月3日 毎日新聞寄稿文)
金明信 国家知識財産委員会 顧問
弁護士が特許侵害訴訟の代理人として選任されている事件において、事件当事者が願うと、弁理士を追加して訴訟代理人として選任することができる法案が5月、国会の産業通商資源中小ベンチャー企業委員会を通過し、現在法制司法委員会に係留されている。同法案によると、弁理士は常に弁護士と一緒に法廷に出席するようにしている。
それならば、法司委員会の機能は何であり、権限はどこまであるのか。 国会法によると該常任委員会を通過した法案について法司委員会は法体系と字句の審査だけをするようになっていたが、この機会に弁護士の利益に反する法案はろくな審議もしないまま会期満了で廃棄してきた。そのため、2021年9月に国会法第86条第5項を新設し「法司委員会は回付された法案の体系と字句の審査範囲を外れて審査してはならない」という強行規定を設けることになった。また、国会法第32条の4と同条の5により、議員が所属委員会の案件審査時に利害衝突が発生するおそれがある場合、所属委員会委員長にその案件に対する表決および発言の回避申立てをしなければならないという規定が2021年5月に新設された。そうであれば弁護士の法司委員らは特許侵害訴訟の代理人資格に関する弁理士法改正案を審議する際には利害が衝突するので審議を回避することが妥当であると考える。
今回の改正案に対して韓国科学技術団体総連合会、韓国工学翰林院、韓国技術士会、ベンチャー企業協会などをはじめ特許侵害訴訟を経験した大多数の企業は国会通過を念願しており、英国と欧州連合27ヶ国、日本および中国がすでに弁理士に特許侵害訴訟代理権を付与している。司法制度が韓国よりもさらに保守的な日本も産業界の要求を受け入れられて、2002年から弁理士にも弁護士と同様に特許訴訟代理権を付与しているが、弁護士単独で代理したときよりも訴訟期間が平均10ヶ月程度短縮されたという。
現在、特許侵害訴訟は弁護士と弁理士が一緒に働いている大型の法律事務所が事実上独占しているため、訴訟費用が高いが、この改正案が施行されれば中・小型の法律事務所も働ける機会が生じ、かえって訴訟費用が抑えるだろう。そして今年6月、スイスの国際経営開発院が発表した全世界64ヶ国の知的財産政策評価報告書で、韓国は国民総生産高対比研究費投資が2位であり、特許出願件数が4位であったが、知的財産政策執行の効率性順位は37位として評価された点は痛ましいと思われる。
MP3プレーヤーは1997年に韓国のセハン情報システムが世界で初めて特許権を取得し、経営不振で米国会社に特許権を譲渡してしまったが、もしこの特許権を韓国企業が所有していたとすれば世界の音楽ストリーミング市場の版図は大きく変わったかも知れない。このように弁理士の役割が重要である。三星とアップルが両社の死活をかけて全世界にわたり携帯電話に関する特許侵害訴訟を進行する時、法律と技術的争点を同時に扱うために弁護士と弁理士が共同で代理した。特許無効訴訟と侵害訴訟の管轄裁判所が二元化されている上で弁護士と判事の技術内容の把握が容易でなかったため、おむつ特許に対して最高裁判所の判決を受けるまでなんと11年8ヵ月もかかった弊害を是正するために特許侵害訴訟の管轄裁判所を集中させた事実と、第4次産業革命時代の知的財産が直ちに国家競争力であることを勘案してみたとき、弁理士の選択的特許侵害訴訟代理問題をこれ以上弁護士と弁理士の職域葛藤だけであると見てはならない。
先端技術が日増しに安保化されている激しい国際特許戦争に能動的に対処し、国益と公正社会のため |